判断ミスをなくす!行動経済学

『「損」を恐れるから失敗する』

PHP新書1091

こんには、iNoです。

和田秀樹さんの書かれたこの本。

とても面白かったので今日はその紹介をさせていただきます!

 

え?損を恐れちゃいけないの?

人は誰しも損を嫌うものですよね。損とか絶対したくないし。

でもそれが強すぎると逆に損をしてしまうよ。というのがこの本の内容。

 

目次

序章 「損」を恐れて失敗してしまう人たち

第一章 「損をしたくない」心理は人間の行動原理

第二章 あなたは、どちらを選びますか?

第三章 日本人もアメリカ人も基本的真理は同じ!?

第四章 「損をしたくない」気持ちをビジネスに利用する

第五章 「損をしたくない」心理を消費に結びつける税制はこれだ!

第六章 「損をしたくない」気持ちを日常生活に生かして「得」をとる

第七章 「損をしたくない」心理の判断エラーを防ぐ奥の手

 

序章 「損」を恐れて失敗してしまう人たち

誰も損なんてしたくないですよね。

人は得するより損することのほうが2.25倍も強く反応するそうです。

つまり、1万円損したときの心理的な不快感は、2万2500円得したときの喜びと釣り合うイメージです。

同じ1万円でも、もらったときより失う時の方が2倍以上も強く感じるということです。

 

これは損失回避性の法則と呼ばれ、これが強すぎると現状維持を求め、新しいことに挑戦できなくなる可能性が高くなります。

この損失回避性の法則を知れば失敗を減らせます。

知っているのといないのとでは、まったく違うのです。

 

 

第一章 「損をしたくない」心理は人間の行動原理

例えば100億円持っている人が、1万円失ったとします。

絶対数で見ればそんなに大きな損失ではありませんしほとんど影響はないはずです。

しかし、1万円を失ったという気持ちが生じます。

 

これは、人の認知能力が「変化」に反応するようにできているためです。

いつもあるポスターに何が書いてあるかは覚えていないけど、新しくポスターがはられると「あれ?」と反応する。

それと同じように、人は「失った」という変化のほうに注意が向かいます。

 

人は物事を正確にに判断をしていると思っていてもこのようにバイアスにかかっていて実態とは違うものをとらえていることが大半です。

このバイアスを学ぶことで判断ミスや認知ミスを防ぐことができるようになります。

 

このように、経済活動は人の心理が大きく影響するものなのに、日本では心理学的知見が経済政策にほとんど生かされていません。

 

 

第二章 あなたは、どちらを選びますか?

ここで質問です。あなたはどちらを選びますか?

A.今1万円もらえる。

B.3年後に3万円もらえる。

 

この場合、Aを選ぶ人は結構多いんじゃないでしょうか?

人は遠い先の未来より、目の前の事に目が向きます。

不確実な未来より、今確実にもらえる1万円を手に入れたほうが得だと考えるからです。

 

では、の質問です。あなたはどちらを選びますか?

C.今1万円取られる。

D.3年後3万円取られる。

 

今度はDを選ぶ人が多いのではないでしょうか。

3万円取られることの方がはるかに痛みが多いはずですが、それでも今1万円取られることのほうが嫌だという気持ちが強くなります。

 

人の損得勘定には、近視眼的になりやすい傾向があります。

特に得したときよりも損したときのほうが心理的インパクトが大きいので、損をするケースでは特に近視眼的で不合理な判断をしがちです。

 

このように、目先の損失を回避したい。という心は誰しもが持っているものです。

重要なのはそういった心理を知った上で不合理な判断を抑制する対応ができるかどうかです。

 

また質問です。あなたはどちらを選びますか?

A.100%の確率で1万円がもらえる。

B.50%の確率で3万円がもらえる。

さて、この場合はどちらを選びますか?

Aを選ぶ人が多いのではないでしょうか。

期待値で見るとA.は1万円、B.は1万5000円ですからB.のほうがお得です。

 

では、次の場合はどうでしょう。

C.100%の確率で1万円取られる。

D.50%の確率で3万円取られる。

あなたはどちらを選びますか?

D.を選んだ人がかなりいるかもしれません。

先ほどと同じで、期待値を計算するとC.はマイナス1万円、D.はマイナス1万5000円ですから、D.のほうが損です。

それでも、リスクを冒す人は結構います。

 

人は得をする場面ではリスクを回避する傾向があり、損をする場面ではリスクを追求する傾向があります。

これを利用すれば様々なことに使えますね。

例えばあなたが銀行員で人に株式投資をすすめようとしているとしたら。

今投資しておけば将来得しますよ、といってすすめるのではなく、今投資しないと損をしますよ、と言ったほうが買ってもらいやすくなります。

また自分が何かをすすめられているとき、このことを知っていれば相手が何を売り込もうとしているのか、自分にとって何が一番いい選択なのかを選ぶことができるようになります。

 

 

第三章 日本人もアメリカ人も基本的真理は同じ!?

日本人は人と同じことを好み、あまり自分の意見を言わない。アメリカ人は人と違う意見をはっきり言いたがる。

そんなイメージがありますが、実はアメリカ人も日本人と同じように、みんなと一緒だと安心するし、周りとトラブルを起こすのは嫌なのです。

ですが、アメリカ人は周りの人に影響され、間違ったものを正しいと思ってしまうものだということを知っています。

アメリカでは教育によって人間の心理特性のマイナス面をできるだけ出さないようにしようとしているのです。

 

  • 人は周りに合わせてしまう
  • 人は意に反していても権力者に服従する
  • 最後の場面、最後にあった人の印象が残る
  • 人の成績は平均に戻っていく
  • 過去に費やしたコストがもったいなくて止められない
  • 「間違えた」と思いたくないので正当化する

 

これらに気をつけておくだけでもかなりの判断ミスを減らせるでしょう。

 

 

第四章 「損をしたくない」気持ちをビジネスに利用する

 日本人はモノを失うことには敏感ですが、目に見えないものについては損をしたという感覚にあまりならないそうです。

サービス残業がはびこっているのも、そういった目に見えないもの、時間に対する損の感覚が鈍いからなのでしょう。

 

家事代行サービスも、時給で考えたとき、時給が5000円の人なんかであれば1時間2000円の家事代行サービスにお願いしたほうがお得ですよね。

しかし日本人は、家事代行に2000円も使うのはもったいないと考えるようです。

知的財産などにおいてもそうです。

日本人は時間や知識など、目に見えないものに対しての損失には鈍感な傾向があります。

 

 

第五章 「損をしたくない」心理を消費に結びつける税制はこれだ! 

 さて質問。所得税増税と消費税増税、どちらが嫌か?

人は損をすることにとても反応します。自分のものを失うことをとても嫌うというのはすでに触れましたし、現に嫌ですよね。

 

所得税は天引きされ、残ったお金を自分のものとして使うことができます。

つまり、手に入る前に天引されるのでそこまで痛みを感じません。

しかし消費税は、なにか商品を買うたびに支払うものですよね。

人は変化に反応するようにできています。つまり、消費するたびに支払う消費税のほうが損をしたという感覚が強くなります。

所得税増税のほうが所得に対して大きな影響を与えるとしても、消費税増税のほうが心理的には痛みが大きいです。

 

消費するたびに損をしていると感じるので、ものを買いたくなくなるのは当たり前ですよね。

そのため消費税増背税は景気に悪影響を与える税といえます。

 

 

第六章 「損をしたくない」気持ちを日常生活に生かして「得」をとる

この章は、振り込め詐欺心理的な錯覚を利用する還付金詐欺について書かれています。

こういった詐欺がどんな心理を利用しているのか、またなぜ騙されてしまうのか。

それを知っているのといないのとでは、詐欺に引っかかってしまう可能性がだいぶ変わってきます。

 

 

第七章 「損をしたくない」心理の判断エラーを防ぐ奥の手

人は印象で判断してしまう傾向があります。

 

判断を正しくするには、詐欺師がやっていることと反対のことをするといいそうです。

詐欺師に共通するテクニックは、情報遮断と即断即決です。

銀行のATMが閉まる時間ギリギリに電話をかけ焦らせることで、誰かに相談する時間を奪います。

そして即決させる。そうやって人からお金を奪います。

このテクニックと逆のことをすればいいのです。

 

要するに、情報を集め、きちんと検討して冷静に判断をすること。

そうすれば間違った判断を防げるということです。

 

まずは判断する時間を確保することが大事です。

時間が許す限りデータを集め、賛成意見、反対意見、メリット、デメリットを比較検討すればより正しい判断ができるようになります。

 

また、人はバイアスにかかってしまうということを理解し、違う意見の人と話し合ったり人に相談をするということも大切です。

 

 

人は常にバイアスにかかってしまうということ。

自分が見ている世界はそのバイアスにかかった状態のものであるということ。

そのことを常に考えておけば、間違った判断をしにくくなります。

そして行動経済学、心理学を学ぶことによって本当に自分にとって得なことは何なのか、自分がしようとしている行動は正しいことなのか。

定期的に読み返しバイアスにかかっていることを実感することが大事ですね。